不眠症の改善には「認知行動療法」が効果的

不眠の女性
  • 寝つきが悪くてなかなか眠れない(入眠障害)
  • 睡眠中にしばしば目が覚める(中途覚醒)
  • 早朝、まだ眠いのに目が覚め、再び寝ることができない(早朝覚醒)
  • 十分眠ったはずなのに熟睡した感じがしない(熟眠障害)

このような症状が長期間継続する状態を、「不眠症」と呼びます。
成人のおよそ、4人に1人が不眠で悩んでいると言われています。また、男性に比べて女性の方が不眠症になりやすいとも言われています。

不眠症については、なんとなく以上のような情報を知っている方も多いとは思います。しかし、その不眠症の原因と、対策方法についてご存知の方は多いと思います。

実は、不眠症は不安やストレスなど、心の問題から発展することが多いのです。
そうした心の問題による不眠の改善に効果的なのが、不眠症のための「認知行動療法」です。

不眠の女性

そもそも、不眠症の原因とは?

不眠は、心理的な問題、生活習慣から発生することの多い病気です。強いストレス、生活上の心配事の長期化などは、自律神経に影響を及ぼします。

自律神経は、私たちの体を自動的にオンとオフに切り替える役割をしています。このバランスが崩れると、リラックスへの切り替えが上手くいかないために、不眠が生じます。

また、睡眠に関する思い込みによって不眠に陥っている場合もあります。
「これくらいの時間は寝ないといけない」「眠れなかったらどうしよう、、」といった考え方が、睡眠を妨げてしまう原因となります。

不眠症と認知行動療法

不眠症に多い原因として、「睡眠に関する不適切な思い込み」「ストレスなどによる過度な緊張」があります。

認知とは、脳の情報収集、情報処理活動のことです。その人なりの「考え方」「解釈」という風に考えると分かりやすいでしょうか?
本来、健康な睡眠の方なら、睡眠は「リラックスする時間」「疲れを取る時間」として認知されているはずです。

しかし、睡眠に対する認知が誤っている方、ストレスや心配事、あるいは睡眠にストレスを感じている方の場合、全く誤った認識が定着していることがあります。

例えば、眠れない日が何日が続き、過度なストレスを受けてしまうと、、

  • きっと今日も眠れない
  • 夜になると眠れない
  • 睡眠は苦痛に感じる

などと、誤った認識による緊張感が生じることがあるのです。

こういう方の場合、寝室やベッドと、ストレスが結びついてしまっていますので、布団に入った瞬間から不安を感じてしまいます。

こうした、誤った認知が「眠れない」状況を自ら作り出してしまうのです。

認知行動療法は、間違った条件付けの解消や、心身の緊張状態の緩和を目的とした療法です。不眠に対しては、睡眠に関する問題に焦点をあて、認知の誤りを正していきます。
患者さんによっては、例えば、治療の一環で、寝室や寝具を変えてみるといった方法をとる場合もあります。

他にも、不眠に関する主な技法として、条件付け不眠に対処する「刺激抑制療法」、筋肉の緊張を緩和する「筋弛緩療法」、リラックスのために自己暗示をする「自律訓練法」という方法が、多く用いられています。

以下に簡単に説明しておきます。

認知行動療法

刺激抑制療法

先ほどの、寝具や寝室を変えるという方法もこれに入ります。
限界まで眠くなるまで、布団には入らない。布団の中で睡眠とセックス以外はしない。といった方法もあります。
これは、眠りに対する誤った刺激を取り去るといった意味があります。

筋弛緩療法

睡眠に誤った認識を持っていると、本来睡眠をとらなければいけない時間になると強いストレスを感じてしまうことがあります。
この時、全身の筋肉は人間の意志に反して、自然と強い弛緩状態を作り出してしまいます。

筋弛緩法の一般的な方法として、あえて布団に入った状態で全身の筋肉に力を入れます。拳を強く握り、意識して全身に力を入れます。
全身の緊張状態を意識できたら、力を抜きながら体の緊張を解いていきます。
その過程で、自然と体は力が抜けたリラックス状態を維持できるようになります。

このような方法で本当に効果があるのか、不安を感じると思いますが、実際によくテレビなどで紹介される方法です。

筋弛緩法について、実践してみたいという方は、不眠の書籍や、不眠の認知行動療法についての書籍などを参考にされると良いでしょう。

自律訓練法

この方法は、自己暗示の一環ですが、私自身実践して、最も効果を実感できた方法です。
言葉による自己暗示で、リラックスを深める方法です。自己暗示と言っても、ストレスによる症状を改善するために精神科や心療内科などでも推奨されており、正しく習得すれば、かなりの効果を実感できるようになります。

具体的な手法を紹介すると非常に長くなってしまうので、気になる方は下の記事も参考にされてみてください。

認知行動療法は、行動技法に重点を置いた心理療法です。そのため、実践者自身(患者さん)が、積極的に学び、実践することで効果が得られやすくなります。
また、認知の誤りは一種の「クセ」ですから、2~3回実践したからといって改善するものでもありません。

専門家に付いて取り組んだ場合でも、週1回のカウンセリングから始めて、改善までは平均12~15回のカウンセリングが必要です。
焦らず毎日の生活の中で実践し、習慣づけていくことが重要です。

繰り返しとなりますが、認知行動療法については、書籍やサイトで実践方法などが紹介されています。
カウンセリングを受けることが最も効果的ですが、まずは専門の書籍を参考にして取り組まれても、一定の効果は期待できます。

不眠は多くの場合精神的な問題に起因します。しかし、免疫系の疾患、呼吸器系の疾患、その他身体疾患による場合も多々あります。不眠以外に身体的な異常がある場合は内科などの受診も考慮しましょう。

不眠症の改善には「自律訓練法」が効果的

自己暗示

眠たいのに不安で眠られない。
ストレスが強く、横になってもつい考え事をしてしまうために、中々眠りに落ちない。。

こうした不眠の症状に悩んでおられる方は、少なくありません。
そんなふうに、緊張状態が続いてしまい睡眠が浅くなったり、なかなか寝付けないという方に向いているのが「自律訓練法」という方法です。

自律訓練法

自律訓練法とは?

自律訓練法とは、ドイツの精神医学者シュルツ教授が開発した、由緒あるストレスケアの方法です。
簡単に説明すると、一種の「自己催眠法」ですが、自身で緊張状態を緩和するために、とてもよくできた方法と言えます。
もちろん、精神科、心療内科などでも広く用いられている方法です。

自律神経のスイッチを意図的に切り替える

私たちは、活動と休息を自動的に切り替えています。日中は活発に過ごしていても、日が沈むとリラックスし、時間がくると自動的に眠くなるのが普通です。
この切り替えを行っているのが「自律神経」と呼ばれる脳内の神経系です。

この「自律神経」は、強いストレスを受けたり、ストレス環境に継続してさらされることによって、バランスを崩してしまいます。
その際に、大きな影響を受けるのが、自律神経の中でも、休息を促進する「副交感神経」です。

副交感神経の働きが阻害されると、体は休息したくても、脳の指令によって休息状態には向かいません。そのため、不眠の症状が起こるのです。

本来、自律神経は緊張状態や活動を促す「交感神経」と、休息を促す「副交感神経」が、日中と夜の時間に交互に切り替わります。
ストレスや緊張状態、悩み事、考え事などが続くと、本来夜の時間に働くはずの副交感神経が正常に働かず、いつまで経っても眠くなりません。

眠くならない

自律訓練法は、自己暗示によって心の緊張緩和を図る方法です。具体的には、副交感神経の働きを高め、自律神経のリズムを整える効果が期待できるのです。

実は、この方法は不眠症の方だけでなく、ストレスや不安によって体調不良に悩まされているほとんどの方、例えばあがり症の方や、緊張でお腹の調子を崩してしまうという方などにも、非常に効果的です。
むしろ、そうしたストレスの症状に悩む方が自己治療の一環として取り組むことが多い方法です。

自律訓練法の注意点

自律訓練法については、インターネットで検索すると、どのように取り組むべきか、具体的な方法も沢山紹介されています。

しかし、実際に自律訓練法を実践してみた経験から言えることですが、自律訓練法を練習するなら、なるべく本屋さんなどで自律訓練法の専門の書籍を購入し、じっくり時間をかけて取り組むことを強くお勧めします

というのも、自律訓練法は、たった1日で習得して、効果が上げられるような方法ではないからです。
習得するまでには、それなりに時間もかかります。インターネット上に、具体的なやり方が書かれていても、ほとんどが一般の方の主観的なやり方に過ぎず、そうした方法で習得できることは、本当に稀だと思います。

実際に、医療関係者の方が手順を書かれた書籍には、事前にどのように準備をして、どのような心構えを持って、どれくらいの頻度で練習すべきかも書かれています。
インターネットで調べて書いてある情報と比べると、情報の量と質が、全く違います。

しっかり練習つもりがあるなら、是非、自律訓練法についての本を購入し、実践することをお勧めします(一般的な本屋さんで売られています。図書館にも置いてあることがほとんどです)。

以下に、自律訓練法のやり方について、簡単に触れておきますが、これはあくまで、自律訓練法がどのような方法なのかをお伝えするための紹介です。

繰り返しとなりますが、本当に習得されたい方は、書籍などを購入して実践されてみてください。

不眠に効果的な自律訓練法とは、どんな方法?

自律訓練法は、リラックスすることが目的です。
まずは、邪魔が入らずに集中できる環境で行いましょう。ゆったりした椅子に(足を伸ばせるような、安楽椅子などが望ましい)腰掛け、目を瞑り、ゆっくりと呼吸をすることを心掛けてください。

実践する場所に関しては、慣れてくれば普通の椅子でも大丈夫ですし、ベッドの上でも実践できます。慣れるまでは、しっかりとリラックスできる環境を整えることがコツです。

公式に沿って、心の中でつぶやく

自律訓練法には、7つの公式があります。公式と言っても、難しいものではなく、心を落ち着け、自己催眠状態に入るための「簡単な短い言葉」です。

この7つの公式を、心の中で何度か繰り返してつぶやき、自己暗示に入っていきます。これが、自律訓練法の実際の方法です。

自己暗示の状態に入ると、とてもリラックスした良い気分になり、自律神経も「副交換神経」へと切り替わります。
文章で書くと、とても簡単そうに聞こえるかもしれませんが、実際に書籍を読むと、準備や、リラックスするための心構えなど、簡単ではないことが分かります。

穏やか

ちなみに、7つのすべての公式を行わなければいけないものではありません。

リラックスして眠るのが目的なら、私の経験上、第3〜第4くらいの公式まで習得すると、驚くほどすんなりと眠れます。
時間をかけたくない場合は、2つ目の公式までを習得するだけでも、十分に効果を実感できると思います。

また、1回の練習にかける時間は、5分〜くらいが良いと言われています。長く時間をかけすぎずに行うのも、ポイントとなります。
自己暗示を行う上では、常に「同じ言葉」を使うことが大切です。声に出す必要はありません。必ず同じ言葉を心の中で繰り返しましょう。

注意すべき点として、自律訓練法では、脱力感などが生じることがあります。最後に必ず「消去動作」と言われる、自己暗示の解除を行ってください。

それでは、実際にリラックスした安楽椅子やベッドの上で、全身の力を抜いてリラックスし、目をつぶってから、以下の手順で自律訓練法を進めていきます。

自律訓練法の手順

背景公式(準備)

 

「気持ちがとても落ち着いている」

と、心の中でつぶやく。落ち着いて、何度か繰り返し呟きます。

自律訓練法は、最初に気持ちを落ち着かせることから始めます。ゆったりとした気持ちで、ゆっくり呼吸しながら、自分の心が落ち着いていることを実感してください。

第一公式 重感

実際に気持ちが落ち着いていることを実感したら、、

「右手が重い」

と、何度かつぶやく。
右手が重く感じてきたら、次は、「右手が重い、、、左手が重い、左手が重い」というふうに、徐々に、左手 → 右足 → 左足 と、重さを感じていきます。

第二公式 温感

重感を実感できたら、次に暖かさを感じる訓練に移ります。
両手、両足の重感を実感した状態のまま、次は、、

「右手が温かい」

と、つぶやいて、暖かさを実感していきます。
今回も、重感と同じように、右手、左手、右足、左足と順番に温かさを感じていきます。

この、温感まで感じられるようになったら、ほとんどの場合、驚くほど非常に心地よい気分を実感できます。
そして、ここまでを習得するのが、実際にはとても難しいのです。

ここから先は、少し簡単に説明していきます。

第三公式 心臓調整

 

「心臓が静かに規則正しく打っている」

心臓の鼓動を感じます。徐々に心臓の鼓動がゆっくりとなっていきます。

第四公式 呼吸調整

 

「楽に呼吸をしている」

ゆっくりと、楽に呼吸をします。深く、長い呼吸へと、自然に変わっていきます。

第五公式 腹部温感

 

「お腹が温かい」 

お腹の温感を感じます。腹部には、自律神経が集中する「太陽神経叢(たいようしんけいそう)」というものがあります。
この第5公式まで習得すると、全身をリラックスした状態に保ち、様々な体の不調が改善されます。

第六公式 頭部調整

 

「額が心地よく涼しい」

額が心地よく涼しくなっていることを感じます。この公式を実感するのは、少し難易度が高いようですが、実感できるようになると、高いレベルで自己暗示が完成している証拠でもあり、非常に深いリラックス状態を実感できるようです。

消去動作(解除)

自律訓練法の練習を行った後は、暗示を解くために消去動作を行います。

両手をグーパーグーパーと、閉じて開く動作をします。
両手を上に上げながら背筋を伸ばします。
伸ばしきったら両手と肩を落としましょう。

ここまでが、自律訓練法の一連の動作となります。

自律訓練法は、元々一人で行う治療法です。もちろん、一人でもできますが、経験のある指導者の下で正しく行う方が、上達の近道でもあります。

ただし、自己暗示というだけあって、中には怪しげな指導者もいると聞いたことがあります。なるべく、心療内科や精神科。または、そうした病院に所属する医師が開催する、指導会で学ぶと良いでしょう。

まとめ

「自律訓練法」は、私自身実践していますが、なかなか寝付けないという方、睡眠が浅いという方には、とてもお勧めの方法だと思います。
慣れてしまえば、短時間で自宅(ゆっくりと座れる場所なら自宅以外でも)実践でき、もっと慣れてしまえば職場の椅子の上でも実践できてしまいます。
もちろん、副作用の心配もなく、お金もかかりません。

不眠の症状だけでなく、ストレスや緊張、それに伴う症状全般に高い効果が見込めます。

ただし、最初のうちは毎日時間をとって練習しなければ身につかず、効果が見込めない始めの数日間は「本当にこれで合っているのかな?」と、何度も疑問に感じてしまいます。

だからこそ、これから自律訓練法を学ぶ方は、医師の方が監修した専門の書籍や、病院での指導を受けることをお勧めします。
上にも、自律訓練法の方法を、一応具的には書いていますが、あれだけでは実践には不十分です。
実践される方は、必ず専門の書籍に目を通されることを、お勧めします。